お受験目指すシングルマザー「月14万の教育費を捻出するために固定費を下げたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、35歳・シングルマザーの会社員。子どもの私立小学校入学を目指している相談者。高騰する教育費を捻出するために、他の固定費を下げたいといいます。想定した進路のままで教育資金はもつでしょうか? FPの坂本綾子氏がお答えします。

35歳シングルマザー(会社員/正社員)ですが、子どもをできれば私立小~私立大に入れたいと考えています。

教育費を捻出するために他の固定費を下げたいのですが、何から着手すればよいでしょうか。また、老後資金をためるにはどれくらいの額を準備をすればよいでしょうか。

子どもはいわゆるお受験対策塾などに通っており、現在教育費が月10万円ほど平均でかかっております(講習があるとさらに上がる時もあります)。現在、年中でその程度なので、来年年長になったら教育費は受験費用など含めて年額200万ほど必要なのではと想定しています。

元夫からの援助は養育費月5万円(18歳の誕生日まで)のみです。もし私立に入学できた場合は義務教育の間は私が費用を負担するつもりですが、高校以上は元夫にも学費の支払い(折半を想定)を求めることができます。

現在想定している私立小学校からの学費は、6年間で860万円、中学・高校が500万円、私大文系を想定して500万円、その他合わせて2,000万円ほどと考えています。元夫に高校以降の学費を折半してもらうと想定すると、自分では約1,600万円ほどを教育費として捻出しなければなりません(実家からは贈与税の範囲内で小・中・高進学ごとにお祝い金有)。

現時点でも家計がマイナスなのに、このまま突き進んで良いものか資金繰り的に絶対無理があるものか、アドバイスを頂戴できますと幸いです。今は実家や親戚などから資金援助もありなんとか生活できていますが、このまま頼ってはいられないと考えてもいます。

なお、住居はこのまま賃貸予定で、再婚予定はありません。

【相談者プロフィール】

・女性、35歳、会社員、独身(離婚)

・同居家族について:子ども1人(5歳)

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円(給与天引き分・養育費は含まず)

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:約45万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万円

・食費:7万円

・水道光熱費:2万3,000円

・教育費:14万円

・保険料:1万9,000円

・通信費:9,000円

・車両費:車はないので交通費として1万円

・その他:美容費2万円、医療費1万7,000円、日用品1万円、被服:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:(給与天引きにて)財形貯蓄3万円、

DC年金加入者掛け金2万1,000円、子の養育費5万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):530万円

・現在の投資総額:330万円

・現在の負債総額:0円


坂本:シングルマザーで、お子様を小学校から私立に入れて大学まで進学させたいというご相談ですね。

正社員で、しかも35歳の女性としては収入が多いので、実現できる可能性はあります。条件は、親子ともに健康であること、そして正社員としてこれから50代半ばまでの約20年間、昇給して収入が増えていくことです。

将来の収入の可能性から教育費を出せる額を判断

シングルマザーですから、仕事による収入の確保は最も重要。新型コロナウイルスの感染拡大により、業種によっては給与やボーナスが減るなどの影響が出ています。そういった影響を受けにくい業種でしょうか。また会社や職種によっては、若いときは給与が安いけれど年齢とともに昇給していくパターンと、若いときから給与が高い割に昇給率はそれほどでもなく比較的フラットなパターンがあります。勤務先の給与規定を確認してください。今後の収入を予測しておくことは、教育費としていくら出せるかを判断するうえで重要です。

希望のコースで大学まで進学した場合、2856万円必要

元夫は月5万円の養育費を支払い、高校以降は学費の支払いを求められる条件になっています。ご実家も進学の節目にお祝い金を出すなど協力してくれます。シングルマザーとしては恵まれた立場です。ただ、「このまま頼ってはいられないとも考えています」との言葉通り、ご自身の収入でちゃんと収支が取れた上で、親族からのお祝い金は余裕資金に回せるのが理想です。

現在、月14万円を教育費として払っていますから年間では168万円にもなります。首都圏の有名私立大学の理系学部の学費に相当する金額です。お受験対策塾の費用ですが、私立小学校に進学後は、これを小学校、中学校、高校、大学の学費として支払うことになります。もし月14万円を大学卒業までの17年間払い続けると、14万円×12カ月×17年=2,856万円。高校以降は元夫から半分出してもらうと想定し、自己負担は約1,600万円の計算です。

差額の分が浮いてくるので余裕資金になります。余裕資金は教育費以外の支出に回す、老後資金のための貯蓄に回すなどが考えられます。大まかに計算して、子どもの成長にともない収入が増え、毎月14万円のペースで教育費を出し続けることができれば、ご相談者の希望はかないそうです。ただし、これはあくまで教育費を中心に据えたプランです。

教育費14万円が家計を圧迫…

「教育費を捻出するために他の固定費を下げたい」と書かれています。収入が多いので家賃が安い公営住宅は入居資格がありません。都内で10万円の家賃は高いとはいえないでしょう。保険料が高めですが、シングルマザーという立場から多めの死亡保障を確保しているのでしょうか? 固定費ではありませんが食費の7万円は、子どもが5歳の親子2人暮らしにしては多いですね。ただし、フルタイムで仕事をしているので、食事はすべて手作りとはいかないでしょうし、健康のためにも食費を削ることはお勧めしません。

客観的に見て、教育費の14万円が突出していること以外は使いすぎとは思えません。教育費は毎月の手取り収入45万円に対して31%を占めています。これ以上増やすと、今でもアンバランスな家計がさらにバランスを崩すことになります。となると、問題は年長さんになる来年の教育費がさらに増えそうなことです。あくまで1年だけの特別支出として、来年は貯蓄を取り崩さざるを得ないでしょう。

無事にお受験が終わり、小学生になれば、その後は落ち着くと思われますが、私立特有の寄付金や親同士のお付き合いなど、授業料以外の支出については、その都度シビアに判断してください。

万が一の時のための方法も検討して

一度、教育費以外の観点から、シングルマザーとして抱えるリスクや、これからの子どもとの生活について考えてみてはいかがでしょうか。ご相談者が病気やケガで働けなくなる事態が起きないとは限りません。そういったリスクを想定し、最低限の保険に入り金銭での備えをすると同時に、親族に頼めることがあれば頼んでおくなど、人手の確保もしておきましょう。

また、住宅はこのまま賃貸とのことですが、いずれ実家を相続する予定がなければ、例えば家賃と同程度の負担で買える家を住宅ローンを組んで買えば(団体信用生命保険に加入)、万一の時は子どもに住まいを残すことができます。現在35歳ですから住宅購入の時期として悪くはありません。

進路変更が可能にしておくのも一つの考え方

子どもはまだ5歳ですから、個性を発揮してくるのはこれからです。子どもの意思がはっきりしてきたときに、子どもが望む進路を実現できるよう、小さいうちはなるべく支出を減らして貯蓄を増やしておくという考え方もあります。

もちろん、子どもにしっかりした教育を受けさせるのは、いずれ自分の力で生きていかねばならない子どもにとって、親からの最大のプレゼントです。

多額の教育費を使ってでも小学校から私立に進学させたいのは、もしかするとご自身がそのような進路を経てきて、その価値を感じているからでしょうか。

老後資金は退職金があればどうにかなりそうだけれど…

老後資金については、現役時代の収入が多いので、65歳以降の厚生年金もそれなりにもらえるでしょう。毎月の財形貯蓄とDC年金掛け金を老後資金として貯めていけば累計額は25年後の60歳時に元本で1,530万円になります。このほかに退職金がもらえるならなんとかなりそうです。ただし、老後も賃貸だと、その分、生活費の負担が増えるので、その点は注意が必要です。

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