おいしい「ぼた餅」ありがとう 「月見茶屋」西友道ノ尾店が今月末閉店

「今後は本店をひいきにしてもらえたら」と語る天野久子さん=月見茶屋西友道ノ尾店

 「お諏訪のぼた餅」で知られる長崎市内の食事処、月見茶屋の西友道ノ尾店(同市葉山1丁目)が、今月末に閉店する。1989年の出店以来、市北部に広がった常連客からは、惜しむ声が聞かれる。
 月見茶屋は1885年、同市上西山町の諏訪神社境内で創業した老舗。うどんやぼた餅が市民に親しまれている。西友道ノ尾店は1989年、西友からテナント出店要請を受け、月見茶屋初の支店として開業した。
 道ノ尾店を店長として切り盛りしてきたのは、月見茶屋経営者の天野健治郎さん(82)の妻、久子さん(77)。当初はぼた餅のテークアウトだけの店だったが、ニーズに応えてイートインコーナーを作り、99年には現在の食事処スタイルへと改装した。
 「レシピは本店と全く同じだが、うどん定食やぼた餅・抹茶セットなど、本店では出していなかった新しいメニューを出すパイロット店の役割を果たした」と久子さん。市北部の新興住宅地に住む客でにぎわいを見せ、本店よりも人数の多い従業員が忙しく走り回った。年末には本店では出せない年越しそばも出した。
 しかし、夫婦が高齢となって体力が衰えるとともに、今後のことが気掛かりに。息子の幹大(もとひろ)さん(50)が店長を務める本店の経営に注力するため、前向きな選択として支店の閉鎖を決断した。
 常連客の女性は「気軽に入れるお店として繁盛していた。ぼた餅がとてもおいしかった。なくなるのが寂しい」と残念がる。
 久子さんは「本店から遠い場所に出店したことによって、本店の存在を意識してもらい、『お諏訪さんの店に行ってきたよ』という声を聞くのがうれしかった。あと数年やりたいという気持ちもあったが、今はほっとしている」と話していた。


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