長崎総科大 九州初のオンサイト施設開設 地域課題の解決に期待

オンサイト利用によるミクロデータ利用

 長崎市の長崎総合科学大は来年3月、公的統計の原資料となる調査票情報を使い、研究者が独自の集計、分析を行う「オンサイト施設」を開設する。国内に14施設あり、九州で初めて。行政や地域企業と連携し地域課題の解決を図る同大の「オープンイノベーションセンター」の機能拡充の一環。
 各省庁がホームページなどで公開している国の統計調査結果のうち、集計前の世帯や事業所ごとの個票形式の調査票情報(ミクロデータ)は近年、公益性のある学術研究への活用が可能となっている。
 オンサイト施設は、調査対象の秘密保護を図り、情報セキュリティーが確保された環境下で、ミクロデータを使った分析、研究を行う専用室。ミクロデータ利用を希望する研究者は、総務省所管の独立行政法人「統計センター」に利用申出書を提出し、審査で認められると、オンサイト施設内で閲覧、研究できる。
 同大は今年7月、研究成果や人材を本県の経済・社会活動に還元するため、オープンイノベーションセンターを開設。オンサイト施設の設置を通して、内閣府が推進する「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)=根拠に基づく政策立案」の多面的な展開拠点を目指す。
 具体的には、ミクロデータを活用することで、本県の人口流出の要因や、地域における電力需給の最適化などのエネルギー利用状況を分析。地域課題の解決に向けた提案や研究者のネットワーク化が期待される。
 藤原章センター長(総合情報学部マネジメント工学コース准教授)は「本学のデータサイエンス教育の水準向上とともに、九州で唯一のEBPMの拠点として学術的かつ戦略的に地域課題の考察を深めることを両立させたい」と話した。

© 株式会社長崎新聞社