ユニクロの会長とマックの会長でも差がある?本当の「お金持ち」とは

コロナ禍による経済の変動や、在宅時間の増加によって、お金に向き合う人が増えています。「お金持ちになるには、いったいどうしたらいいのか」と悩んでいる方もいるでしょう。

そこで、経営コンサルティングとしてオーナー経営者を中心に多くの富裕層に接し、自身も事業と投資で富裕層となり、億単位の資産を株式投資で運用する個人投資家でもある経済評論家・加谷 珪一氏の著書『150人のお金持ちから聞いた 一生困らないお金の習慣』(CCCメディアハウス)より、一部を抜粋・編集してお金持ち特有の思考パターンや行動原理を紹介します。


そもそもお金持ちって?

皆さんは「お金持ち」と言うと、どんなイメージを持つだろうか? 会社の社長さん? ブランド物で身を固めてベンツやフェラーリを乗り回す人? それとも豪華なディナーやため息が出るようなパーティだろうか?

一方で、「本当のお金持ちは地味で慎ましい」という話もよく聞く。代々続く資産家の家は、上品だが質素な身なりをしていて、決してお金を持っていることを鼻にかけないらしい。また、こんな会話もよく耳にする。「xx の旦那さんは上場企業の役員なんだって。やっぱり上流階級のお金持ちは違うわよね」

一体どんな人が、本当のお金持ちなのだろうか。

同じお金持ちでも、資産家と高給取りは違う

実は、世の中のほとんどの人が、お金持ちのことをよく理解していない。最大の間違いが、

・「毎年の収入が多いこと」
・「資産をたくさん持っていること」
・「社会的地位が高いこと」

を混同していることだ。

フェラーリに乗っているちょいワル風のオヤジは、年収は高額かもしれないが、その裏には多額の借金があるかもしれない。一方、代々の土地持ち一家は、資産の額は莫大であっても、年収は普通のサラリーマンと変わらないかもしれない。

では、フェラーリオヤジと土地持ち一家では、どちらがお金持ちだろうか? 答えは、どちらもお金持ちである。ただし重要なことは、フェラーリオヤジは資産家ではないが、土地持ち一家は資産家だということ。少し難しい話をすると、フローとストックの違いなのだ。

つまり、フロー (毎年の収入)が極めて大きい人、もしくはストック(持っている資産)が極めて大きい人のことを、世の中ではお金持ちと呼んでいる。だから、例にあげた2人はどちらもお金持ちだ。

一方、収入や資産が多いことと、会社での地位は必ずしも一致するわけではない。大企業の部長や役員であっても、日本企業の場合、1年間の収入は大した額ではない。大企業のお偉いさんは、社会的な地位が高いことは間違いないが、お金持ちなのかどうかは、それだけでは判断できないのだ。

わかりやすい例が、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏と、日本マクドナルド元会長の原田泳幸氏だ。2人の最大の違いは、柳井氏はハンパではない資産家であるということ。ファーストリテイリングは柳井氏自身がオーナーとなっており、株式の2割強を保有している。資産総額は4兆円を超える。柳井氏の役員報酬は億を超えているだろうが、株の配当だけで数十億円の収入があることを考えると、給料などタダ同然だ。

これに対して日本マクドナルドは、原田氏がオーナーだったわけではない。原田氏の年俸も庶民から見たらすごい額ではあったが、柳井氏と比べると、特別お金持ちというわけではない。原田氏は高給で雇われるプロの経営者なのだ。さらに状況を複雑にしているのが、いわゆる社会的なステータスだ。日本の一般的な上場企業の社長の年収は、数千万円が標準的。たしかに庶民から見たらお金持ちだが、ちょっと前まではふつうの給料だったことを考えれば、彼らの生活は庶民と何も変わらない。

三者の生活レベルは、あまりにもかけ離れている。だが社会的地位という意味では、皆同じなのである。

「年収」「資産」「社会的地位」に注目して考える

お金持ちと思える人に出会ったら、年収が高い人なのか、資産を持っている人なのか、地位が高いだけでお金は持っていないのか、このあたりに注意を払ってみると、いろいろなことがわかってくるはずである。

あの人はお金持ちなのになぜ貧乏そうなのか?

かなりの資産家のはずなのに、お世辞にも高級とは言えない服(いや、実際にはかなり貧乏くさい服)を着て、スーパーの安売りに並んでいるというタイプのお金持ちも存在している。

この人たちはどのような人種なのだろうか? このようなタイプのお金持ちはズバリ、以下の2つの人種に集約される。

(1)主な資産が土地で活用できない
(2)貯金が目的となっている

日本のお金持ちの資産は土地に偏っている

日本のお金持ちたちの資産は、土地に大きく偏っているのが特徴だ。土地は都心の一等地なら高値で売れるだろうが、そうでないところの土地は、そうそう簡単に売却できるものではない。

また日本は、東京などの都市部にほとんどすべての機能が集中しているので、土地をたくさん持っていても、それを活用してお金を稼ぐことは実は結構難しい。アパート経営が関の山だ。

しかも、日本の相続税はかなり重い(最大55%)ので、孫の代になると相続税を払うために土地をすべて手放すはめになる。資産のほとんどが土地というお金持ちは、資産を持っていてもそれで十分に稼ぐことができないのである。

これが欧米のように資産の多くが金融資産になっていれば、株に投資したり、会社に出資したりと、いろいろな運用方法があり、資産からお金を生み出すことができる。だが、有効活用しにくい土地しかない資産家は、そこから得られる収入は小さく、固定資産税を支払ってしまうとほとんど残らない、という状況が十分にあり得るのだ。

そうなると望むと望まざるとにかかわらず、質素な生活をしないと赤字になってしまう。スーパーの安売りに並ぶはめになるわけだ。

お金を貯めること自体が、目的になっている

お金を貯めることが自己目的化しているお金持ちも、その原因の多くは不動産絡みだ。

埼玉県に住むR子さんは、現在75歳。旦那さんはすでに亡くなっていて、現在は一人暮らし。R子さんの家は、旦那さんが親から相続した土地に30年前に建てた。他に相続した小さな土地を売って資金を得たため、ローンを組むことなく土地と家を手に入れることができた。

夫婦は両方とも公務員(教師)だったため給料も安定しており、退職金も2人分。年金も厚生年金や国民年金と比べると手厚い。しかも2人の子供たちは小学校から公立で、大学は国立大学に通ったので、学費も比較的かからなかった。つまり、2人分の稼ぎのほとんどが可処分所得だったのである。

だが、R子さん夫婦は老後が心配と、外食や海外旅行もせず、一生懸命貯金に励んでいた。このため、家を含めるとR子さんの資産は優に1億を超えることとなった。

R子さんは、多くの人がイメージする資産家とはほど遠い生活をしている。だが、まぎれもなく億単位の資産を持つ富裕層なのだ。

手厚い年金で、老後に土地を手放す必要がない

土地の所有者は高齢者に偏っている。高齢者は手厚い年金で生活が保障されており、土地を手放す必要がない。

首都圏の郊外でちょっとした土地を親から引き継いだ人であれば、見かけ上の資産が8000万円に達するケースは少なくない。本来そのような人は引退後は土地を売却し、貯金を取り崩しながら生活をするものだ。しかし今の日本の高齢者には、その必要がない。こういった人たちの生活は庶民そのものだが、統計上は富裕層にカウントされるわけである。

著者 加谷 珪一

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