60歳までに住宅ローンを完済したい49歳看護師。残り1700万円をあと11年で完済するには?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、49歳、一人暮らしの看護師の女性。現在は1,700万円のローンが残る持ち家に住んでいますが、老後破綻しないために、60歳までに完済を目指したいとのこと。どんなマネープランを検討すればよいでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。


老後破綻しないために、60歳までにマンションのローンを完済したいと思っています。2,700万円を借り入れし、残債が1,700万円です。その他、車のローンが2万7,000円/月あります(ボーナス返済はありません)。

体調を崩して最近復職しました。現在の職場は退職金制度がなく、福利厚生などの点で転職をしたほうがよいか考えています。職場環境も過酷で、残業も多く体調を崩さないかにも不安があります。職業は看護師なので、なるべく働き続ける事を目標にしたほうがよいかと考えています。

貯蓄をしたいのですが、まだ試用期間中でボーナスなどの金額ははっきり分からない状況です。今ある貯蓄は、なるべく使いたくないと考えています。

60歳で払い済みになる終身保険は、貯蓄目的だったので、解約すれば600万程度、年金保険(1万1,000円/月支払っている)が年間48万円の収入にはなる予定です。

iDeCoやNISAでの貯蓄をしたほうがよいかも教えて頂けると助かります。

【相談者プロフィール】

・女性、49歳、看護師、独身

・住居の形態:持ち家(マンション、北海等、一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:27万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:90万円

・毎月の世帯の支出の目安:20万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:2万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:0円

・保険料:2万8,000円

・通信費:1万円

・車両費:3万円

・お小遣い:1万5,000円

・その他:5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):670万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:1,700万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

飯田:今回は、体調を崩し復職して働いている49歳の相談者様です。ボーナス払いなしで住宅ローンを組んでおり、残債は1,700万円。老後破綻が心配なため、60歳までには完済を考えているとのことです。現在の勤務先は退職金制度がなく、福利厚生などの点で転職を検討しており、看護師という職業柄、なるべく働き続ける事を目標にしたほうがよいかとも考えているそう。その他、iDeCoやNISAでの貯蓄についても知りたいようです。

相談者様の場合、60歳まで完済するにはどのようにすればよいのか、また、その注意点は何か。転職や貯蓄についてどのように向き合っていくべきかを考えていきます。

60歳までの11年間でどのように返済していくべきか?

住居費は8万円となっていますが、住宅ローンの返済の他に、管理費や修繕積立金も含まれていると思います。ただ、その他の情報として、住宅ローンの残債1,700万円のみしかないため、こちらで作ったデータでシミュレーションさせていだだきます。

たとえば毎月の住宅ローン返済額6万5,000円、管理費と修繕積立金が1万5,000円の場合でシミュレーションしてみました。

住宅金融支援機構のフラット35で毎月6万5,000円の返済額で金利が年1.5%だった場合は、1,700万円を返済するのに27年かかる結果となっています(完済76歳)。そうなると、16年分を繰り上げ返済しなければならない計算になってしまいます。実際には、もう少し低い金利、もしくは返済期間は短いかもしれませんが、あくまでもこのデータは参考に留めておいてください。

借り換えのシミュレーションをしてみましょう

現在のフラット35の金利の9割以下が年1.480%~2.540%。そのなかでも最も多い金利は、年1.480%となっています。現在、借りている住宅ローンの金利が高いと感じられるなら、借り換えを検討してもよいでしょう。借り換えをする場合は、住宅ローンの返済期間、金利、残債などを総合的に判断しなければなりません。各金融機関のHP上でシミュレーションできるようになっていますので、自分の利用している住宅ローンデータを入力し、借り換えのメリットがあるのかを判断してください。その際には、事務手数料なども含めてメリットの有無を確認していきましょう。

もちろん、現状の住宅ローンを繰り上げ返済して、11年間で完済できればそのままのローンを継続し、60歳までに完済するためにはどのように返済資金を貯めていくべきかを考えていきましょう。繰り上げ返済は、返済のタイミングが早いほど効果が期待できますよ。

iDeCoやNISAを始めるなら繰り上げ返済の余剰資金で

毎月の支出内容を見ていくと、収入と支出の差額が約7万円あります。もし、使わないで普通預金にプールしているのなら、住宅ローンの繰り上げ返済資金として活用し、余剰金をiDeCoやNISAに回してもよいでしょう。

毎月2万円、ボーナス時には50万円を貯蓄に回されているとのこと。11年間ではそれぞれ264万円と550万円が貯まる計算であり、現在の670万円とあわせて60歳の時点で1,484万円が貯まっている計算です。

その他にも貯蓄目的の終身保険が600万円程度、年金保険が年48万円の受け取りが見込まれ、公的年金も受け取ることができますので、現状で2,000万円を超える資金が確保されている状況にあります。

iDeCoやNISAを検討しているようですが、老後資金として考えているのなら、税制優遇制度が充実しているiDeCoへの加入を検討してもよいですね。まずは住宅ローンの繰り上げ返済を優先にして、余裕がある場合は、iDeCoや貯蓄に回すようなスタンスでよいでしょう。無理に貯めなくて大丈夫です。

転職はローンの借り換えを考慮して

住んでいる地域によって多少の違いはあると思いますが、看護師の資格を持っているなら、転職もしやすいと思われます。ただし、住宅ローンの借り換えをする場合には、転職すると審査で不利になってしまうことも考えられます。まずは、住宅ローンをどのようにするのかが固まってから、転職を考えてもよいでしょう。

看護師は、病院の他にも高齢者施設などで日勤のみで働くこともできますので、年齢を重ねてからシフトに融通がきく働き方をする転職を考えてもよいかもしれませんね。

ライフプランをしっかりと考えて計画的にお金を使い、貯めている相談者様ですから、どのようにすべきか、自分で判断できるかと思います。体調を崩されたようですので、無理をせず、健康第一でお仕事に取り組んで行ってください。陰ながら応援しています。

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