「埋もれた核被害者も救済を」 長崎の被爆体験者が訴え 岩永さんらの映像、世界へ

被爆体験者を取り巻く不合理な現状をカメラに向かって訴える岩永さん=長崎市松山町、平和公園

 埋もれた核被害者も救済を-。非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が19日、オーストリア・ウィーンと被爆地の長崎、広島などを結んだオンラインイベント。長崎から「被爆体験者」の女性が参加し、原爆に遭っても被爆者と認められない不合理な現状を世界に訴えた。
 イベントは、核兵器禁止条約第1回締約国会議の重要議題の一つ「核被害者支援」への理解を深めるのが目的。
 長崎会場の長崎原爆被災者協議会(長崎市岡町)には20人以上が集まった。国指定地域外で長崎原爆に遭った被爆体験者の岩永千代子さん(86)と濵田武男さん(82)の事前収録映像を配信。濵田さんは、被爆者認定を求める集団訴訟の原告が高齢化し相次いで亡くなる現状を報告し、「被爆者なのに『被爆体験者』と勝手に名前を付けられて悔しい」と述べた。
 岩永さんも映像の中で、原爆に遭った後、歯茎の出血や髪が抜ける症状などがあり「原爆のせいかと不安だった」と吐露し、「後世に続く(放射性降下物による)内部被ばくの脅威をおろそかにしてはならない」と涙ながらに訴えた。

事前収録映像で、被爆体験者が置かれた現状を説明した濵田さん(左奥)。被爆者の本田さん(右から2人目)、川野さん(同3人目)も核兵器廃絶などを訴えた=長崎市、長崎原爆被災者協議会

 会場にも姿を見せ、平和祈念像前で英語通訳を交え「被爆体験者は不合理な制度の中で生きている。体験者以外にも(差別を恐れて)被爆者の認定申請をしないまま埋もれた人もいる」と、不十分な救済の実態を証言した。
 長崎原爆遺族会の本田魂会長(78)は「核兵器の残忍さと破壊力を経験した日本や核保有国は条約に参加していないが、世界平和と核廃絶を目指し、運動をやめるわけにはいかない」とスピーチ。終了後、県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(82)は「締約国会議を単なるセレモニーで終わらせてはならない。核禁条約に賛同する国が少しでも多く出てくること、廃絶に向けた工程を作っていくことが会議の役目」と話した。


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