「核保有国や日本に圧力を」 長崎の被爆医師・朝長さん ウィーンで条約参加訴え

締約国会議で「核保有国や日本に条約に参加するよう強い圧力をかけなければならない」と訴える朝長さん=ウィーン

 オーストリア・ウィーンで開かれている核兵器禁止条約第1回締約国会議2日目の22日、長崎市の被爆者で医師の朝長万左男さん(79)が英語でスピーチに臨んだ。被爆地の「核なき世界」への願いを背に「核保有国や日本に条約に参加するよう強い圧力をかけなければならない」と訴えた。
 2歳の時、爆心地から2.7キロの自宅で被爆。被爆した同世代が白血病を発症していると知り、長崎大医学部に進んだ。現在、「県被爆者手帳友の会」会長や非政府組織(NGO)核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会委員長を務める被爆地の「顔」。20日の「核兵器の非人道性に関する国際会議」では、日本政府代表の「非核特使」として出席し、登壇者に質問するなど会議を見守った。
 過去4回開催された同会議に毎回出席し、医師として核兵器の非人道性を告発してきた朝長さん。22日のスピーチでも専門的見地から、高齢の被爆者に心筋梗塞の発生率が高まっている統計を紹介。自身も4年前にがんを患い、放射線治療中と明かし「被爆者はがんなどの不安から解放され、穏やかな時を過ごしたことはない。私たちの子孫に放射線の影響が及ばないように祈りたい」と述べた。
 被爆者の高齢化が進む中、核禁条約の発効は「大きな喜び」。一方で、唯一の戦争被爆国の日本が米国の「核の傘」に守られ同条約に背を向けていることに「私たち被爆者は失望を覚えている」と憤る。核なき世界の実現のため「『ジレンマ』を乗り越えなければならない」と強調した。


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