故郷に錦を

 7勝7敗で迎えた千秋楽、相手は幕内有数の長身・巨漢の碧山関。的が大きいのは好都合、思いっ切りぶつかるだけ…のはずが、立ち上がったら相手が変化していた。そのまま体勢を崩されて、無念の8敗目で新入幕の秋場所は終わった。大相撲、平戸市出身の平戸海関▲しょんぼり、と音が聞こえてきそうな取組後の様子が忘れられない。無理もない。前頭16枚目-幕尻での負け越しは多くの場合、そのまま十両への陥落を意味する。ところが▲のこったのこった、残った。十両の上位陣に好成績者が少なかったことなどから、開催中の九州場所には先場所と同じ地位で臨んでいる。幸運。いやいや、これこそ「運も実力のうち」だ▲“ご当地”の力士にはひときわ熱く大きな声援が飛ぶ。少し古めかしい〈故郷に錦を飾る〉の言葉がお相撲にはぴったり来る。今場所は、諫早市出身で同じ境川部屋所属の對馬洋関も、うれしい新十両の場所▲誇らしげに2本並んだ「のぼり旗」が秋の青空にきらきら…ファンのSNSだろうか、写真を見つけた。夕方に楽しみな日課が増えた-そんな皆さんもきっと多いはずだ▲幕内力士の土俵入り、平戸海関は先頭を歩いてくる。化粧まわしに描かれているのは平戸城と平戸大橋。薄いブルーの地に、赤い橋がよく映えている。(智)


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